シンガポールを知るための62章(2009年7月)




 シンガポールという国は、非常にユニークな国である。それは多様な民族性(Ethnicity)の共存、抑圧的な政府の維持、1960年代以降アジア随一の経済成長力から語ることが出来る。
 1つ目の多様な民族性の共存は、シンガポールでは主に3つの民族が共存している
華人系75%、マレー系14%、インド系9%である。そのため、公用語は4種類存在する(英語、マレー語、中国語、タミール語)。これらの共存には政府による介入のほか、多様な教育制度による効果が大きい。
 2つ目の抑圧的な政府の維持は、シンガポール政府は一院制で、人民行動党(PAP)*が主権を握っている。歴史を紐解いても、政府が国民の生活に介入することで秩序を保つことで、正当化していることがわかる。このような政府が支持されている背景には、高い経済成長力の維持と隙のない情報的閉鎖環境によるものといえる。しかしIT発達により、情報抑圧が不可能になりつつある今、今後の政府運営の課題と考える。3つ目の高い経済成長力は、先を見据えた政策戦略と外交戦略である。
初代首相リー・クワンユーの1960年代〜80年代までのシンガポール高度成長期を支えた功績は大きい。独立直後は労働集約型産業を誘致する戦略をとっていたが、80年代に入ると、資本・技術集約型産業の誘致に取り組んだ。それらを外資系企業に協力を仰ぐことで、国内の労働需要の増加と貿易の活性化を生んだ。また、ASEAN、米国、日本を始め、今日の貿易主要国との外交も高い経済成長力を支えている。
 一方、情報のオープン化により、これらの戦略(特に政府介入)関してはは、今後国際的に批判の的となる可能性もある。そのときには、初代首相から引き続いた「正しい判断をするのは政府であり、自分たちである」(1)という考えを改めなくては行けない時が来るかもしれない。

(1)脚注より抜粋